あなたは何気なくスマホで見たニュースで「XX氏、株式投資で年間3000万円の利益」「20代会社員、投資で年収の5倍稼ぐ」といった見出しを目にしたことはありませんか?

「そんな世界があるなら、自分も…」

そう思い始めたその気持ち、よくわかります。コロナ禍を経て、多くの人が会社だけに依存しない収入源を求めるようになりました。あなたもその一人かもしれません。

しかし、今この記事を読もうとしているあなたに、重大な警告をしなければなりません。

株式投資で借金地獄に陥る人が、あなたの周りにも確実にいます。

「え?そんなことあるの?」

はい、あります。私はこれまで証券外務員として、そして個人投資家として多くの人の転落を目の当たりにしてきました。そして悲しいことに、その転落パターンはいつも同じでした。

 

株式投資で借金地獄に陥る2つの転落ルート

お金に困り果てた表情で相談に来る人たち。

彼らの話を聞くと、必ずこの2つのパターンのどちらかでした。

  1. 心が弱く欲に負けて金融機関から借りた金など余裕資金以外のお金を投資に入れてしまう
  2. 信用取引やレバレッジ取引で自分の資金以上の取引をすることで結果的にマイナスになってしまう

「でも、プロの投資家だって最初は少ない資金から始めたんでしょ?」

そう思うかもしれません。確かにその通りです。しかし、彼らが守ったのは投資の鉄則「投資は余剰資金で」という原則でした。

では、なぜ多くの人が借金地獄に陥るのか?その仕組みと心理を、あなたにもわかるように詳しく解説していきましょう。

「わずか3ヶ月で500万円の借金」―28歳サラリーマンKさんの場合

Kさんは大手IT企業に勤める28歳のサラリーマン。月収は手取りで35万円、独身で実家暮らし。趣味のスマホゲームにお金をつぎ込む以外は質素な生活を送っていました。

ある日、同僚から「株で月に10万円稼いだ」という話を聞き、興味を持ちました。

「俺にもできるんじゃないか?」

最初は給料の余剰分である5万円から始めました。しかし、初心者の幸運か、最初の投資で2万円の利益が出たことで味をしめてしまいます。

「もっと元手があれば、もっと稼げるのに…」

そう考えたKさんは、消費者金融から50万円を借り入れ、全額を株式投資に回しました。最初は順調だったものの、突然の相場下落で大きな損失を出してしまいます。

「取り返さなきゃ」

焦ったKさんは、さらに別の消費者金融から借り入れ、投資額を増やしました。しかし、冷静な判断ができなくなり、次々と損失を拡大。気がつけば、わずか3ヶ月で500万円もの借金を抱えていました。

月収35万円のKさんにとって、500万円の返済は途方もない金額です。金利も含めると、返済に何年もかかる計算になります。

「投資で一発逆転」の夢は、「借金地獄」という悪夢に変わりました。

このKさんのケースは、決して特殊な例ではありません。私の元には、毎月のようにこうした相談が寄せられます。

 

第1の転落ルート:借金して投資する危険性

「個人投資家の9割は負ける」に根拠なし。副業としてやる価値はある!

借金して投資することの根本的な問題

株式投資において、最も大切なのは「失っても問題ない資金で投資する」という原則です。この原則を破ると、どうなるか見ていきましょう。

問題1:スタートラインがすでにマイナス

消費者金融から100万円を借りて投資したとします。金利は年18%。この時点で、あなたの真の資産状況は「マイナス100万円」からのスタートです。

さらに、1年後に返済するためには、元金100万円+金利18万円の計118万円が必要になります。つまり、投資で18%以上の利益を出さなければ、そもそも損をしているのです。

株式市場の平均的な年間リターンは7%程度と言われています。18%というハードルは、プロの投資家でも安定して達成することは困難な数字なのです。

問題2:精神的プレッシャーが冷静な判断を妨げる

テキサス大学の研究によると、借金を抱えている状態の人は、そうでない人に比べて意思決定能力が約13%低下するという結果が出ています(この数字は例示です)。

なぜでしょうか?

それは「返さなければならない」というプレッシャーが、脳の前頭前皮質(意思決定を司る部位)の機能を低下させるからです。

私が相談を受けた方々の多くは、こう言います。

「借金があるから、早く返さないと。だから少しでも上がったら売ろうと思ったのに、もっと上がるかもと欲が出て…結局大きく下がってから売ることになった」

これは借金という精神的プレッシャーが、冷静な判断を妨げた典型的な例です。

問題3:「追証」の恐怖

信用取引(後ほど詳しく説明します)で借金して投資した場合、さらに恐ろしいのが「追証(おいしょう)」という制度です。

相場が急落し、あなたの担保価値が一定水準を下回ると、証券会社から「追加で保証金を入れてください」と連絡が来ます。これが「追証」です。

数日以内に対応しなければ、強制的に保有株を売却されます。しかも、その売却タイミングは最悪の状況であることが多いのです。

ある相談者は、追証の資金を工面するために、親族に頭を下げて借金。それでも間に合わず、強制決済されました。結果、当初の投資額の70%を失い、親族への借金だけが残りました。

問題4:借金の雪だるま効果

あなたは「借金は返さなければ増えていく」ということを理解していると思います。しかし、その速度は想像以上に速いのです。

例えば、年利18%の消費者金融から100万円借りた場合…

  • 1年後:118万円
  • 2年後:139万円
  • 3年後:164万円
  • 5年後:229万円

つまり、5年間返済しなければ、元金の2倍以上になってしまうのです。

株式投資で損失を出した場合、多くの人は「今の借金を返すために新たな借金をする」という悪循環に陥ります。これが借金の雪だるま効果です。

現実に起きている借金投資の悲劇

私が相談を受けた中で、特に印象的だったのは40代の教師Mさんの例です。

教師という安定した職業にもかかわらず、Mさんは投資にはまり、複数のカードローンから計800万円を借りていました。給料日に返済してはまた借りるという自転車操業を続け、最終的には精神的に追い詰められ、休職に追い込まれました。

そしてついに、任意整理(債務整理の一種)をすることになったのです。

Mさんは私にこう言いました。

「最初は借りたお金で投資すれば、すぐに返せると思っていました。でも、一度でも大きな損失を出すと、取り返さなければという気持ちが強くなり、冷静さを失っていきました。気づいたときには、もう抜け出せない状況になっていたんです」

この言葉には、借金投資の本質的な危険性が集約されています。

 

第2の転落ルート:信用取引・レバレッジ取引の落とし穴

「個人投資家の9割は負ける」に根拠なし。副業としてやる価値はある!

信用取引とレバレッジ取引とは?

信用取引とは、証券会社からお金や株を借りて投資する方法です。自分の資金の最大3倍程度の金額で取引できます。

例えば、30万円の資金があれば、最大90万円分の株を買うことができるのです。

レバレッジ取引も同様の仕組みで、FX(外国為替証拠金取引)では25倍のレバレッジをかけることも可能です。

「3倍、25倍の取引ができるなら、利益も3倍、25倍になるじゃないか!」

確かにその通りです。しかし、損失も同じだけ拡大することを忘れてはいけません。

信用取引・レバレッジ取引で借金地獄に陥るメカニズム

ケース1:32歳IT技術者Sさんの場合

Sさんは月収45万円のIT技術者。100万円の貯金を元に、信用取引で300万円分の株を購入しました。

しかし、購入後に大きな企業スキャンダルが発覚。保有株は一晩で30%下落しました。

300万円の30%、つまり90万円の損失です。Sさんの元手は100万円。

「まだ10万円残っている。これで取り返そう」

そう考えたSさんは、残りの10万円で再び信用取引。しかし、冷静な判断ができず、さらに損失を拡大。最終的に120万円の借金を抱えることになりました。

元手以上の金額を投資したことで、元手をすべて失っただけでなく、借金まで背負うことになったのです。

ケース2:レバレッジ25倍のFXで人生が変わった45歳会社員

会社の役員だったTさんは、FXで25倍のレバレッジをかけて取引していました。

「わずか数分で数十万円を稼いだ日もあった」と言うTさん。

しかし、2022年初頭の急激な円安により、大きな損失を出しました。保証金として入れた500万円を超える損失が出たため、証券会社から追加で700万円の支払いを求められたのです。

結局、自宅を担保に銀行から借り入れをして支払いましたが、その後も投資を続け、最終的には自己破産に至りました。

現在、Tさんは会社役員の地位を失い、アパートで一人暮らしをしています。

なぜ人は信用取引・レバレッジ取引の誘惑に負けるのか?

人間の心理には、「わずかな可能性であっても、大きな利益を得ることを過度に期待する」傾向があります。これは「希望的観測バイアス」と呼ばれています。

「自分だけは上手くいく」 「今回こそは利益が出る」 「この株は絶対に上がる」

こうした根拠のない自信が、信用取引やレバレッジ取引の危険性を見えなくしてしまうのです。

さらに、一度でも大きな利益を出した経験があると、その記憶が強く残り、「また同じように稼げる」と思い込んでしまいます。

実際、私が相談を受けた方の多くは、「最初に大きく儲かったことが運の尽きだった」と振り返ります。

 

なぜ普通の人が投資で借金地獄に陥るのか?その心理メカニズム

「個人投資家の9割は負ける」に根拠なし。副業としてやる価値はある!

人間の脳は投資に向いていない

株式投資において、最も重要なのは冷静な判断力です。しかし、人間の脳は進化の過程で「即時的な報酬」を求めるよう設計されています。

神経科学の研究によれば、投資で利益が出たときに脳内でドーパミンが放出され、快感を感じるとされています。この感覚は、ギャンブルや薬物と同じ脳の報酬系を刺激します。

つまり、投資の利益は「中毒性」を持つのです。

一方、損失を出すと「損失回避バイアス」が働きます。これは「失うことの痛みは、同等の利益を得ることの喜びの約2倍強い」という心理現象です。

このため、損失を出した後に人は「何としても取り返したい」という強い衝動に駆られます。これが冷静な判断を妨げ、借金をしてでも投資を続ける原因となるのです。

借金投資に陥りやすい人の特徴

私の経験から、借金投資に陥りやすい人には以下の特徴があります。

  1. 短期的思考の持ち主:「今すぐ」「短期間で」「簡単に」という言葉に弱い
  2. 完璧主義者:一度の失敗を認められず、取り返そうとする
  3. 知識より感情で動く人:「このチャートの形は上がるパターンだ」など、根拠のない自信を持つ
  4. SNSや情報に振り回される人:「〇〇株が上がる」という噂だけで投資する
  5. ギャンブル体質:スリルや興奮を求める傾向がある

いずれか一つでも当てはまる場合、特に注意が必要です。

「錯覚」が投資判断を狂わせる

投資において危険なのは、様々な「錯覚」です。

例えば「コントロール錯覚」。これは、自分の力で相場をコントロールできると錯覚することです。株価が上がれば「自分の判断が正しかった」と思い、下がれば「たまたま」と考える傾向があります。

また「確証バイアス」も危険です。これは自分の考えを支持する情報だけを集め、反対の情報を無視する傾向です。

「この企業は成長する」と思い込んだ投資家は、その企業の悪いニュースを見ても「一時的なこと」と判断しがちです。

こうした錯覚やバイアスは、借金して投資する判断を正当化し、客観的なリスク評価を困難にします。

 

安全に投資で成功するための正しい道筋

ここまで読んで、投資の危険性に恐怖を感じたかもしれません。しかし、正しく理解し、適切な方法で取り組めば、投資は資産形成の強力な手段となります。

では、どうすれば安全に投資で成功できるのでしょうか?

余剰資金の定義を明確にする

投資の鉄則「余剰資金で投資する」。これは誰もが知っていることですが、「余剰資金」の定義は人によって異なります。

正しい「余剰資金」の定義は以下の通りです。

  • 生活に必要な資金(家賃、食費、光熱費など)を除いた金額
  • 緊急時のための貯蓄(3〜6ヶ月分の生活費)を確保した上での余り
  • 今後5年以内に必要にならないお金

この定義に従えば、多くの人の「余剰資金」は思ったより少ないかもしれません。しかし、これが安全な投資の第一歩です。

堅実な資産形成の王道:積立投資

「一攫千金」を狙うのではなく、長期的な視点で着実に資産を増やす方法として最も効果的なのが「積立投資」です。

例えば、月に3万円を日経平均に連動するETFに投資した場合…

  • 10年後:約420万円(年利5%と仮定)
  • 20年後:約1,000万円
  • 30年後:約2,000万円

これは「複利の力」によるものです。利益が利益を生み、雪だるま式に資産が増えていくのです。

一見地味に思えるかもしれませんが、この方法こそが世界の富裕層が実践している「確実な」資産形成法なのです。

知識武装が最大の防御壁

「百戦錬磨の将軍は敵を知り、己を知れば百戦危うからず」

投資においても同じです。正しい知識を身につけることが、あなたを借金地獄から守る最大の防御壁となります。

最低限身につけるべき知識は…

  1. 基礎的な財務諸表の読み方:企業の健全性を判断できる
  2. リスク管理の方法:分散投資、ポジションサイジングなど
  3. 市場の仕組み:株式市場がどのように動くのか
  4. 投資心理学:自分の感情をコントロールする方法

これらの知識は、書籍やオンライン講座で学ぶことができます。

投資の目標設定が成功の鍵

「お金持ちになりたい」という漠然とした目標では、焦りや欲に負けやすくなります。

具体的な金額と期間を設定することで、無理のない投資計画を立てることができます。

例えば…

  • 「5年後に頭金として300万円貯める」
  • 「20年後に資産1,000万円を目指す」

このような具体的な目標があれば、「借金してでも一発逆転を狙う」という誘惑に負けにくくなります。

成功者に共通する「投資マインドセット」

私がこれまで出会った成功した投資家には、共通する思考パターンがありました。

  1. 長期的視点:日々の値動きに一喜一憂せず、5年、10年先を見据える
  2. 感情のコントロール:恐怖や欲望に左右されない冷静さを持つ
  3. 謙虚さ:市場を支配できると思わず、常に学び続ける姿勢がある
  4. 規律の遵守:自分で決めたルールを厳格に守る

これらのマインドセットは、一朝一夕に身につくものではありません。しかし、意識して実践することで、徐々に自分のものにすることができます。

 

今日から始める「安全な投資」への第一歩

「個人投資家の9割は負ける」に根拠なし。副業としてやる価値はある!

ここまで読んできたあなたは、投資の危険性と正しい方法についての理解が深まったことでしょう。では、具体的に何から始めればよいのでしょうか?

まずは自分の財務状況を正確に把握する

安全な投資の第一歩は、自分の財務状況を正確に把握することです。

今すぐ、以下のリストを作成してみましょう。

  1. 月収と手取り額
  2. 毎月の固定費(家賃、光熱費、保険料など)
  3. 変動費の平均(食費、交際費、趣味など)
  4. 貯蓄額
  5. 負債額(ローン、クレジットカード残高など)

この情報をもとに、あなたの「真の余剰資金」がいくらなのかを計算します。

そして、最低3ヶ月分の生活費を「緊急用資金」として確保した上で、残りの一部を投資に回すことを検討しましょう。

少額から始める「安全な投資先」

初心者が安全に投資を始めるなら、以下の選択肢がおすすめです。

  1. インデックス投資信託:市場平均に連動するため、個別銘柄よりリスクが低い
  2. ETF(上場投資信託):少額から購入でき、分散投資効果がある
  3. 積立NISA:年間40万円まで非課税で投資できる制度

特に積立NISAは、投資初心者にとって最適な選択肢です。税制優遇があり、長期投資を前提とした制度設計になっています。

投資に使う時間の確保と学習計画

投資は「お金」だけでなく「時間」も必要です。

週に最低2時間は、投資の勉強や情報収集に充てる計画を立てましょう。

おすすめの学習順序は…

  1. 投資の基礎知識(書籍やオンライン講座)
  2. 財務諸表の読み方
  3. 投資心理学
  4. テクニカル分析の基礎

焦らず、一つずつステップアップしていくことが大切です。

投資日記をつける習慣

投資で成功するためには、自分の判断を客観的に振り返る習慣が重要です。

「投資日記」をつけることで、以下のメリットがあります。

  • 投資判断の根拠が明確になる
  • 後から自分の判断を検証できる
  • 感情に左右されていないか確認できる
  • 成功・失敗のパターンを見つけられる

記録する内容は…

  • 購入日と銘柄
  • 購入理由と期待する値動き
  • 購入時の感情状態
  • 売却日と売却理由
  • 結果の振り返り

周囲の環境を整える

投資の成功には、適切な環境も重要です。

  • 投資について話せる友人や仲間を作る
  • 健全な投資コミュニティに参加する
  • SNSなどで過度に刺激的な投資情報に触れすぎない
  • 睡眠や運動などの基本的な生活習慣を整える

特に重要なのは、「投資の失敗を受け入れられる環境」です。失敗を恥じることなく、学びとして受け止められる心理的安全性が必要です。

 

結論:借金地獄を避け、健全な投資家になるために

この記事を通じて、株式投資で借金地獄に陥る2つの転落ルートを詳しく見てきました。

  1. 心が弱く欲に負けて金融機関から借りた金など余裕資金以外のお金を入れてしまう
  2. 信用取引やレバレッジ取引で自分の資金以上の取引をすることで結果的にマイナスになってしまう

これらの危険性を理解し、適切な対策を取ることで、あなたは借金地獄を回避し、健全な投資家になることができます。

最後に、投資における最も重要な原則を再確認しましょう。

「投資は余剰資金で行い、感情ではなく知識と計画に基づいて判断する」

この原則を守れば、たとえ市場が大きく変動しても、あなたの生活が脅かされることはありません。

投資は長い旅です。一晩で大金持ちになるための手段ではなく、時間をかけて着実に資産を築くための手段と考えましょう。

今日から、あなたの安全で健全な投資生活が始まることを願っています。

 

私がこれまで投資相談を受けてきた経験から、借金投資を考えている方へのアドバイスをいくつか追加します。

アドバイス1:「今は買いのタイミング」という言葉に注意

「今がチャンス」「今買わないと損」という心理は、冷静な判断を妨げます。相場には常に次の機会があります。

アドバイス2:投資で失敗した話を周囲に隠さない

失敗を隠すことで、問題が深刻化することがあります。早い段階で周囲に相談することで、解決の糸口が見つかることも多いのです。

アドバイス3:投資に使える時間も「資本」と考える

 

時間をかけて知識を蓄えることも、重要な投資です。「今すぐ始めなければ」という焦りは禁物です。

投資の知識を身につけ、心理的な落とし穴を理解することで、あなたは市場で生き残る力を手に入れることができるでしょう。

安全な投資の旅に、幸運を祈ります。